2018年10月8日月曜日

戸谷峰の秋


10月8日、曇り空を仰ぎながら「雨は降るまい」と決めて国道254号にカブを駆る。自宅から30分もかからずに三才山トンネル手前の帯所橋にカブを停め、野間沢橋から入山する。





この山の樹々は、人々のくらしと共に在った。だが伐り尽くされるような事はなく、株分かれした欅や小楢が森を成す。











どんぐりが多い。この秋、獣たちはたっぷり喰えるだろう。ここにはツキノワグマも棲むのだ。





北ア稜線のナナカマドはすっかり色着いたと聞いた。里山も、こうして錦秋の色彩に染まって行くのだ。





山栗も太った実をこぼしている。




何度訪れたか解らないほど、ここには足を運んだ。今日も大福餅を供えて、山の神さまに感謝を捧げる。





となりの六人坊も秋色に染め上げられている。西の彼方を眺めれば....





雲間から槍穂高の連なりである。






大キレット、南岳、中岳、常念、そしてお槍さま。





一昨年這いずり回った明神のあたりには雲に隠れていた。





このあと、山の樹々は一気に色づいて行く。





大きなほおの樹。







松林の中で、香り高いきのこを見つけた。もうシーズンも終わりだろう。






国道254に降り立つ。いつの間にか雲が取れて青空が広がっていた。






一ノ瀬集落の外れで、すすきの穂を束ねたものを見かけた。もしや、御射神社秋宮さんの祭礼か?





その通りであった。鳥居下に居られた氏子らしき御婦人に伺うと、お神楽の奉納が終わった所だという。






氏子衆が和やかに語らう境内の奥へ、拝殿まで登って行った。軽く会釈をすると、みな上機嫌で会釈を返してくれる。あきらかな余所者なのに、わたしに向けても良い笑顔だった。わたしは作法通り、二礼二拍手一礼の参拝を済ませ、氏子衆に礼を云いながら境内を後にした。山の神さま、ありがとうございました。







2018年10月5日金曜日

蕎麦、実る。


2018年8月18日。まだ午後も早い時刻だが、ポケットにウイスキーの小瓶を忍ばせて拙宅近くの畑みちをぶらぶら拾う。初夏に麦を刈り取った畑には、蕎麦が蒔かれて芽を伸ばしていた。







ひと月経った9月なかごろの蕎麦畑の様子。白く可憐な花をつけた蕎麦畑に立つ。一面の蕎麦の花は、美しすぎて異界のもののようにも思えてしまう。去って行った夏を思い返し、言葉にならない寂寥感を表す色なのだ。






蕎麦の花のときは、長い。咲き始めには、隣の水田はまだ青々としている。これが、時の移ろいに気付かずに居ると、いつの間にか田んぼは黄金色に変じて輝いている。白と緑、白と黄金。鮮やかな色彩の対比も移ろうのだ。









9月22日。白き花も永遠ではない。徐々に褐色をまとい、花は枯れてゆく。花弁の下に、四面体のような蕎麦粒が見える。





午後の蕎麦畑。初秋に眺めた白い輝きはすでに失われている。





 あかとんぼ、空から眺めた景色を、わたしに教えてくれ。










9月28日。たった数日のうちに、蕎麦の花は消え去った。

かつて花が咲いていたあたりを眺めれば、まだ緑色をした玄蕎麦の実を観察する事が出来る。この中で蕎麦の実が太るのだ。









そして十月に入ると、そば殻は暗褐色に変じてくる。





刈り入れまで、あとすこし。新蕎麦の季節まで、わずかである。たまらん。