2019年8月19日月曜日

プーッコのシースを作る



せがれの誕生日に贈ったプーッコ、そしてわたしのプーッコが仮の鞘に収まったままなので、シースを作る。左奥がせがれのプーッコ。となりがわたしの一本。木漏れ日の下で撮ってみた。




シースの構造、作り方には幾つかのメソッドがあるようだが、そのままなぞれば良い日本語のチュートリアルがあるわけではない。海外のプーッコメーカーが公開している映像を眺めながら作業のコツを押さえ、わたしにでも再現可能な方法を探ってみたい。なおわたしには、レザークラフトの経験は無い。





インナーシースを作る。9ミリ厚の木製品があったのでばらして素材に失敬する。ブレードの形、厚みを実物合わせしながらくりぬいて貼り合わせたもの。くりぬきは彫刻刀とヘレ。同じブレードで今後十数本作る予定があるので、サンプルをひとつ残しておく。開口部の斜面の重要性に、後から気づく。



形状に迷いがあった。海外の完成シースを見ると、革越しにインナーの稜線を見せている。わたしが作ったこの2本はころっとした丸みが持ち味と考えている。ならばシースのフォルムも丸っこくていい。



ベルトサンダーで滑らかに仕上げた。ブレードが入る穴が見えているが、ここの端面は斜めに削っておかないとポイント(切っ先)が引っ掛かる。作ってみないと得られない知見というものが多い。





  
手鍋に昆布を浸して、ではない。ウェットフォーミングである。お湯に浸した革を成型することで、インナーシースを抱き込んだ一種の立体形状にするのだ。映像で見ているとフィンランドへのOsmoさんはいとも容易くシースを作るが、わたしにもできるだろうか。






ラップ巻きのプーッコ。濡れたレザーにくるむため、ブレードを錆びさせない予防措置である。念のためアマニ油もひと塗りしてある。




レザーをがしがしっと掴んで引っ張って寄せて、弛みをなくして仮固定する。このときの絞り具合が最終的なホールド感を左右するようだ。ホールドが甘かったときの処置もOsmo先生の動画から学んだ。




穴明には、通常レザークラフトでは菱目打ちという専用工具を用いるようだが、Osmo先生は千枚通しを使う。北欧のプーッコ職人さんたちも同様で、そのサイトやHow to映像を覗くと、「爺さんの代から使っている千枚通しだ」とか「俺は三本の千枚通しを巧みに使い分けるのさ」といったこだわりがあるようだ。わたしのは百均のものなのでせめて研磨して焼き入れを施しておこう。しかしこれでも穴明はしんどい。




縫い上げている最中はぼやきが出るばかりで写真がない。形にして革紐と鹿の角根を着けた様子がこちら。揃えたはずの縫い目がぐだぐだである。革の染めとオイリング、そしてコバの磨きは施していない。




いやはや、レザーへの穴明けが肝である。誰かドリルを使っている映像があったが、解らぬでもない。わたしのプーッコではドリルを使おうか。




これでせがれへの義理も果たせた。

続けて自分用のシースに取り掛かろう。染色と色止め、オイルの仕上げは二本まとめてだ。





そうそう、鹿の角根のカット風景。こういうパーツには心踊らされるものがある。革紐の末端に根付けのようにくくりつけてある。少年時代、トンネル工事の現場で輝いていた化石、畑で拾った黒曜石の矢じり、あるいは裏山で偶然手にした鹿の角。上手く言えない、日常から一歩離れた向こう側にある何か。その出会いや発見を「冒険」と呼ぶモノ、コトたち。この鹿の角のパーツは、冒険を予感させる鍵だ。掌で感じて、未知への旅を思い描くがいい。


    


わたしのシース縫いの様子。ベルトループはD環で取り付けた。やはりぐだぐだの縫い目である。




コバ磨きにウイスキーボトルが使えるか? 専用の道具があった方がよろしいようだ。

この後、クラフト社の染料で色付けし、マットの色止めを施した。仕上げにミツロウを塗りたくって磨くと、百年ぐらい使い込んだ風情となった。面白いものだ。














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