その男、かく在りたしと願う生き方は、「酸性に生きる」ということである。
考えてもみたまえ。アルカリ性の男というのは、如何なものであろうか。
同じことを数年前にも書いた。書いたが信条は変わらぬのでまた書く。男は酸性でなければならない。酸性に生きるためには、酢を喰らわねばならぬ。
小鯵の新鮮なやつが売り場に並んでいた。金沢港直送とある。
鯵のサイズが中型ぐらいに見えるかもしれぬが、フライパンが20cmの小さいやつなのだ。
片栗粉をまぶして10分近く揚げる。油の中で時折返しながら、料理箸に触れる「さくり」という感触を探っている。
カットした人参、玉葱、ピーマン、青唐辛子などと漬け込む。漬け汁に、黒酢、米酢、さらに梅酢をブレンドし、出汁で割って注ぐ。甘みは砂糖をほんの少々。市販のらっきょう酢のようにべたべたと甘すぎる味は、好まない。酸性の男は、酢を甘くしないのである。
その男の包丁による小鯵南蛮である。ふた晩ぐらい漬けたあたりから、味わいというものは深まってくるのだ。
これでしばらくの間は、思う存分に酸を吐けるだろう。
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