2017年12月9日土曜日

星になったタイガー

タイガーは悪いねこで、よくわたしの弁当を盗んだ。








造形の神から見放されたようなねこだった。理由は、神さまが最後にお創りになったねこだからだ。きじ、茶虎、黒、白、そんな猫の毛皮の最後の余りばかりをちくちくと貼り合わせて、この世にお遣わしになったのだ。

そんな哀れなねこだったが、あるときからこころを入れ替えて、弁当を盗まなくなった。




おまえはいいねこだ、そう言ってやると喜んだ。




帰宅して新聞を読もうとすると、邪魔をした。




とても愛らしいねこだった。





ある日、わたしが呑んだくれて帰ると、様子が変だった。毒を呑んだらしい。これは存命中の最後の一枚。前足を痙攣させている。





そのまま入院するも手の施しようがなかったようだ。獣医から迎えに来るように電話があったので、わたしは庭の梅の木の傍らに墓穴を掘った。



穏やかで安らかな死に顔だった。



せがれとふたりで、埋葬した。

「タイガー、お星さまになっちゃった」わたしがそう言うと、倅はこう言い返した。
「お星さまって云うより、この星の一部だね」彼は皮肉屋なのだ。

そっと土の下に安置し、煮干しとまたたびを撒いた。土を被せて、ペットボトルの水を置いた。嵐が来てもボトルは倒れなかった。もう三ヶ月近くなるが、ボトルはタイガーの上に立ったままだ。






0 件のコメント:

コメントを投稿