2018年6月17日日曜日

ひじき大活躍


そのおとこのひるめしに、しばしば黒い物が写り込んでいる。しばしば、というよりほぼ毎日のことである。一体何であろうか。海藻のようだ。よくみればひじきである。





その日も、ひじきである。炒り卵に青葱を混ぜ込んだり、塩鮭のあらでほぐし身を拵えたりしているようだ。しかしそのおとこ、ひじきをかくまで愛するとは、過剰ではないだろうか。










秘密があるのだ。ひじきは梅味に仕立てられているのだ。

そのおとこの手作り梅干しは、減塩しない20%である。これを大量に仕込み、何年も保存している。ときおり、塩っぱくて塩の結晶が付いたような梅干しを塩抜きするのである。果肉の柔らかい南高梅では難しいのだが、果肉感のしっかりした白加賀を使うことでこれが上手くいく。20%のままでは塩辛すぎる昔ながらの梅干しが、練り梅やドレッシングはじめ、さまざまに使われるのである。梅を放り込んだ土鍋に水を張って、時々取り替えるだけである。ひと晩置けば、塩気は半分ぐらいになっている。







梅肉を使った男の手料理である。名付けて「ひじき大活躍」。梅肉とひじきの、佃煮なのか、まあふりかけのようなものである。ひじきはできるだけ国産品を探す。梅肉は、先述の通り塩抜きした物である。ごまは、善光寺さん御門前の八幡屋さんの辛いごまである。






ひじきを洗って笊に開け水気を切る。





これを、テフロン加工のパンで炒りつける。油は用いない。砂糖か味醂を加えても良いだろう。水気を飛ばしながら頃合いを見計らう。






梅干しは塩抜き後に水気を拭き取り、粗く刻んでおいた。






そろそろ良かろう。梅肉を混ぜる。これをのばすようにへらで広げ、梅の味と香りをひじきに移す。






ごまを投じる。これから麺つゆを適量注いで味をまとめる。先に入れた味醂の照りが出ている。梅酢も少し加えた。






調味料の水気が消えたら、あら熱を取って完成。タッパに保存するが、なぜか数日でなくなってしまう。どうやら家人がわたしの眼を盗んで食べているようなのだ。まったくけしからん。






ぬくい飯が捗る。
これひと箸を乗せるだけで、一膳のどんぶりが小宇宙に変わる。めし粒たちが歓喜に震えながら、わたしの口に入ってくる。大きめのどんぶりに替えよう。そう思った次に、炊飯器を一升炊きにせねばと気付く。さらには田んぼを.... そこまで考えて、毎年田んぼを買おうと決意しているのにまだ買ってないことを突きつけられる。

キンミヤとも響き合う。キンミヤに満たされた小さなグラスは、魔術かなにかのように空になっていく。そのうち、そのおとこ、どんぶりを抱いてめしを喰っているのかグラスを傾けているのか、自分でも解らなくなり、眠りにつく。こうした夜の眠りは深く穏やかで、翌朝はキンミヤのことすら忘れている。











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