2019年7月20日土曜日

プーッコ 積層レザーワッシャによるハンドル試作


北欧ナイフのプーッコの世界では、鍛冶屋からブレードを仕入れてハンドルとシース(鞘)を自作するということがしばしばあるようだ。少なくともYouTubeを覗いていると、一人前のフィンランド人は誰もがこのスキルを備えているような印象を受ける。「網戸の張り替え」ぐらいの感覚で、多くのフィンランド人がプーッコのハンドルメイキングを行っているのだろう。いや、もしかしたら、当地ではどの家庭にも鍛造用の炉と設備があって、家長と主婦はブラックスミス(鍛治仕事)を日常的に楽しんでいるようにも思えてしまう。オーロラの下で暮らす愛すべき人々は、実のところどうなのであろう。




本blogは、かつて「暴飲暴食、時々は山」と副題を置いて、imalpという様々な問題を抱えた「その男」が繰り返す愚行と蛮行を記録したサイトを前身とする。旧「その男、薮...」は一度閉ざされたが、中のひとが名前を変え、そして再び妄言毒言を撒き散らす構えだ。ご覧になる方は、充分に注意されたい。

最近のトピックで幾度か触れているが、数年来の交流で『絵描きゴトキャンプゴト』のスズキサトル師匠からプーッコのことを教わり、ハンドルメイキングを試みることになった。勝手が判らないながらも、三本の試作を終えて倅にも一本を贈ることができた。諸事情で山に行けない悔しさをぐっとこらえて、次なる試作に進もう。




本場の本物のpuukkoには、ハンドル材に白樺の樹皮が採用されることが多い。わたしの手元にはまだこれが届かないので、違う材料でハンドル形成を試みる。






上に書いた違う材料とは、牛革である。thetopicalaの動画ではスタックド・レザーワッシャ・ハンドルと表示されていた。牛革の積層である。家にある皮の端切れを集めると、ハンドルの長さ分の厚みを確保できた。タングが通る穴を開ければ、両端を真鍮が挟む小粋なデザインにできそうだ。用途はカッターナイフの代替品、ペンケースに入れて仕事場でも図書館でも使うプーッコ。おっと、図書館に刃物は似合わない。

グルーイングに使うエポキシに、ふと思った。在庫してるやつは10分硬化のものである。早すぎる。革の積層に手間取ることが予想されたので、ホームセンターに30分硬化のエポキシを買いに行った。

一枚ずつ丁寧にエポキシを塗り積層していく。エンドのプレートを決めたら治具にセット。これをひと晩放置する。




朝には完全に硬化していた。




これまでに作ったプーッコを使ってハンドルをラフに削っていく。プーッコはプーッコを駆使して作る、それが良い。大まかな形を取り出したら、電動工具に登場してもらおう。




ディスクグラインダーでの削り風景。このプーッコは細身のハンドルと決めていた。




握っては撫で回し、フィット感を探る。毎日使う道具だ。完璧さは要らない。手に指に馴染むか、それだけである。

サンドペーパーを帯状にして擦りあげ、#400で止めた。敢えて磨かず、レザーの柔らかさを残そう。とはいえ木材ぐらいの感触で、ナチュラルな手感が心地よい。




道具を作るという仕事は、何と愉しいことなのだろう。おのれが使う用途に合わせ、機能、大きさ、形状や手との馴染み、そんなことを考えながらブレードを選びハンドルを作る。素晴らしくクリエイティブな体験である。





ハンドルにミツロウを塗って軽く撫で擦ってみた。感触も光沢も好ましい。一緒に写っているのは加工中の新作である。




そんな感慨に耽っていたら、倅が来ていてこのプーッコを物欲しそうに見ている。こないだ誕生日プレゼントに良いのを贈っただろう? いや父さんあれはあれでこれはこれで、とにかくこれが欲しい。

こうして、レザーワッシャを積層したハンドルのプーッコは、倅に取られてしまった。




しょうがない。ネックナイフの仕立てでシースも作ってやるとするか。











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