週末、わたしは日中をほぼ台所に過ごす。
平日に出来ないこと。朝6時に温泉場の脱衣所に居ること以外に、こんなことだ。酒の肴を仕込むこと。朝からビアを呷ること。昼前にボルドーの栓を抜くこと。ランチをハイボールで愉しむこと。午後早いのにモルトを嗅ぐこと。夕方前だというのに空になったボトルを片付けること。熱燗を流し込みながら家族の夕食をこしらえること。どれもこれも、すばらしい習慣なのだ。
その週末は、豚の白モツを炊くことにした。
開店を待って肉売り場に急ぐ。茹でた白モツふたパックと茸を買い求める。白モツは、まだ脂身を抱き込んでいるのでこれを片付けるところから始まる。
ボウルの中のが脂。これを一緒に炊いた方が持ち味というか、モツ本来の味わいなのだろう。だがミドルの胃袋にこれだけの脂は、重い。
さて一度、水から茹でる。沸騰したら10分ぐらいだろうか、薄めの水割りを二杯飲むぐらいの時間だ。茹でこぼしてモツを洗う。
二度目の茹で上げ。今度はさっとで良い。葱の青いところと生姜の欠片が少し。
湯を棄てて水気を切ったら今度は炊く。
根菜、茸なんかを一緒に鍋へ。水からことこと炊いていく。根菜の灰汁が少し出るくらいで、モツの脂もあまり残っていない。酒を二合注いだだけで味付けは、まだ。
ことこと炊いて、砂糖、味醂を加える。
弱火でさらに一時間ぐらいは炊いただろうか。火を消して少し冷まし、白出汁と醤油を少し、そして本命の味噌を溶く。
ただの味噌ではないのだ。2015年、この台所で仕込んだ青唐辛子味噌。青唐辛子は刻んで油で炒め、これを生味噌に混ぜ込んである。そのまま数年、野菜室の底で眠り続けていたものだ。目覚めよ。
モツの脂を取り除いた分、淡白な味わいとなる。しかし根菜のほろほろとした旨味と長期熟成された青唐辛子味噌の深みが、響き合う。奏で合う。酒が果てしなく消えてゆく。
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